この3部作、すべての冊子に、作家自身の手による加筆と薄葉紙の貼り込みがある。
ABOUT
THE TRANSITION
身体の記憶を線にする
80年代、私はランウェイモデルとして服を着て歩いていました。
デザイナーが布に込めた意図が、身体を通して空間に現れる瞬間を自ら体験しています。
その経験が、今の私が描く線となってよみがえり、自作のアルミペン、墨、薄葉紙という表現となって出てきます。
モノクロの線画の冊子と、鮮やかなPOP冊子。この対極とも言える3部作は、私自身の表現をまとめたポートフォリオとして制作しました。
STORY
MATERIAL ALCHEMY
日常の素材が、物語になる
アルミ板を折って作ったペン、墨汁、薄葉紙。どこにでもあるものが、私の道具です。
一枚の絵を描く時、その絵の周りにある幾つもの物語が見えてきます。だからこそ、描いたものを一度切り離し、他の絵と組み替えることができる。クリアファイルの中で並び替えながら、順番とリズムを探す。一枚では完結しない。並んで初めて、物語になる。並べる順番が変わると、物語が変わる。その発見が、次の一枚を描かせます。この編集作業が、一冊の冊子になります。
『POP』シリーズには、廃盤になったクレヨンを使っています。もう製造されない、今手元にある在庫だけ。その色とテクスチャーをデジタルで再現し、実際の冊子に一箇所だけ手で加筆します。
PHILOSOPHY
THE TRIGGER
すべての人に物語と愛がある
私たちが暮らしている毎日は、本当に自分事なのだろうか、と思うことがあります。自分がその生涯で体験した「身体的な記憶」と「心の動き」は、どこかで上書きされているかもしれない。はしゃいだ時間の温度、恥ずかしさ、孤独感は、私だけが知っている大切な実感のはずです。
私は、人が心の引き出しの奥にしまい込んでいた感情を呼び覚ます「きっかけ(トリガー)」になるように、と描いています。抽象の世界へ放り出すのではなく、あなたの中にある記憶に、直接届く。作品を見た瞬間に「あっ……」と思い出す、あの時の切なさや自由な感覚。
一人ひとりの内側にあるかけがえのない日常を、一本の線や色で繋ぎ、物語として完成させる。そこには、それぞれの愛がある。
Visual Story Artistとして、私はその「きっかけ」を描き続けます。













