映画『花様年華』へのオマージュとして描いた、赤いチャイナドレスの女性の後ろ姿のファッションイラスト。

花様年華へのオマージュ:赤いチャイナドレスの後ろ姿

Artwork Details

Medium:ミクストメディア(廃盤クレヨン再現ブラシ、自作アルミペン、クロマティコ紙のコラージュ、オイルパステル)

Subject:映画『花様年華』へのオマージュとして描いた、赤いチャイナドレスを纏う女性の後ろ姿

Theme:時間、距離、色の記憶。秘められた愛の温度と孤独感

Artist:Visual Story Artist Kazue Shima

The Story

これは時間と、距離と、色の映画だと思っている。
映画を見る時に、私が最も惹かれる3要素が見事に揃っている映画なのだ。

残像が残る、スローモーションの連続で、
想いがその場所にこびりつくような執拗さと、その美しさ。
それは時間をひき止めたい、という愛なのだと思う。

想いを逃すものか、忘れるものか。
と、確かにここに存在した時間を確かめあうことを、私たちに思い出させてくれるよう。

これは広場で語るような愛ではない。
すれ違った時だけに人の息づかいを感じられる距離の話だ。
これでは、人の温度を受け取らざるをえないではないか。

そして何よりこの映画で象徴的なものは、赤という色。

文化の赤。
物質の赤。
現象の赤。
人は赤という色に生かされてきた。

数えきれないほどの赤の中で
私はこの映画の中に、「艶紅」(つやべに)や、「深紅」(ふかくれない)という赤を見つけた。深紅=英語で言えば、スカーレットか。
しかし、このような表現に出会う度に、日本語という言葉に感動する。

この映画を観た時、私は「赤裸々」(せきらら)という言葉を思い出した。
赤裸々とは、「赤」と「裸」という漢字が組み合わさって
”感情や内情を包み隠さず全てをさらけ出す」という意味だ。

彼らは赤の中で、愛をさらけ出したかったはずなのに、包み、隠した。
人は、一生そっと包み抱えていく想いがあるのかもしれない、と昔から思っていたけれど
この映画を見た時に腑に落ちてしまった。

この映画は2000年に公開されたのだけど、
プロジェクト自体は1997年の香港返還を挟む時期にスタートされたらしい。

日本でも多く上映されていた時代で、私はその頃、この映画や香港映画に夢中になった。
見たことのない世界観と色の世界に、多くの日本人にとって刺激的で。
初めて見る街の灯の下で形成された、独特のコミュニティの様子をこの映画の中で感じていたのだな、と、先日この2026に記念上映として東京で再上映を見に行き、この人との交わりの中にいるからこその孤独感のようなものさえ確かめられた気がする。

いずれにしても、香港で育った色鮮やかなチャイナドレスの数々は、見事に主人公の感情を表していて、色と文化の密接な関係に心が奪われてしまう。

廃盤のクレヨンの再現でちょっとポップなこのオマージュイラストだったのだけど、
このポップな形になるまでに
筆で描いた線画に、ガーネット色の紙で映画のタイトル文字を切手のせてみたり、
鉛筆で描いた二人の後に、クロマティコの赤い紙を敷いて、絵の具で描いた花を切って添えてみたり。
リバイバル上映をみた後には、やはりオリジナルのアルミペンの黒いラインに赤のオイルパステルを重ねてみたり。

しかしどの画材でも、どの手法でも、私は男を追った彼女の後ろ姿ばかりを描きたかったのだ、と並べてみてそう思う。

ラブストーリーなのか、時代の話なのか
女の愛の話なのか、それとも男の愛の欲望なのか。

私には一生わからないような愛なのだとしたら、これからもずっと何度も見てしまうのだと思う。

墨と自作アルミペンで描いた後ろ姿の線画に、映画タイトルをガーネット色の紙で切り貼りしたコラージュ。
鉛筆で描いた背中合わせの二人に、クロマティコの赤い紙と切り紙の花を添えたコラージュ作品。
自作アルミペンの黒い輪郭線に、赤いオイルパステルを重ねたチャイナドレスの後ろ姿。

Materiality & Context

筆線画と映画タイトルの切り紙(ガーネット色の紙)

アルミペンと墨による筆線画。人物の輪郭を描いた後、ガーネット色の紙を切り、映画タイトルの文字を貼り重ねた。文字自体を描くのではなく、紙を切って「乗せる」という工程を選んだのは、映画へのオマージュであることを、絵の中に物質として残しておきたかったためだ。

筆画と赤い紙、切り紙の花

鉛筆で描いた背中合わせの二人の背景に、クロマティコの赤い紙を敷いた。花のモチーフは絵の具で別に描き、切り取って紙面に添えている。花はチャイナドレスの柄に通じるモチーフであり、色と感情の結びつきを、平面のコラージュとして再構成する試みである。

アルミペンの黒線と赤いオイルパステル

2026年、記念上映として東京で本作を再度鑑賞した後に制作。自作のアルミペンによる黒い輪郭線の上に、赤いオイルパステルを重ねている。リバイバル上映を通して改めて感じた「人との交わりの中にいるからこその孤独感」を、色を重ねることで表現した

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