Artwork Details
Medium:アナログ・インクドローイング(自作のアルミペン、墨、筆)
Subject:とっさに女を止めようとする男の手
Theme:男女の距離感と心理的葛藤、線が持つ時間の流れの違い
Artist:Visual Story Artist Kazue Shima
The Story
去る女を追う手か、向かう女を止める手か。
男のスタンスは未熟だった。
向き合う距離が近くなってしまったら、その目の中に迷いがあることを、女はすぐに見抜くだろう。
でも同時に、女も恐れていたのかもしれない。男の目の中のうろつきを認めてしまう自分の様を。誰よりもそれは自分が知っているから。
だから止める手に触れてしまったら、それが最後に確かめあうことになってしまうことも知っているから。
スピード感を出すような線は、特にアルミペンでないと出てこない。
均一に出るインクや、滑らかなペン先を持っている道具では、どうしても時間軸が違ってしまう。
迷いながら出てしまった線は、それはそれで良いのか、と描いた瞬間は思う。だがその後にたっぷりと筆で加筆すると、メインの線の時間の流れが違うのだ、と気付く。
どうしても止めたかった手は、静かに動くような時に出ることもある。でも、とっさに止めた手は、この物語の中のものだ。
物語に存在する時間は、いつでも不思議でロマンティックで、そして謎めいている。
Materiality & Context
この作品は、冊子「Brush Line」の見開きページを撮影したものである。
アルミペンと墨で描いた男と女の手。向かう先は違っても、手が語る物語がある。
アルミペンを選んだ理由は、そのスピード感。均一なインクや滑らかなペン先の道具では出せない、迷いながらも一気に引かれる線。
その線の時間軸の速さこそが、男の目の中の迷いを映し出す。
一方、筆による加筆は、まったく異なる時間の流れを持つ。
アルミペンの速い線に、筆がゆっくりと重なることで、作品の中に二つの異なる時間が同時に存在することになる。
とっさに止めた手と、静かに動く手——その両方が、一枚の絵の中で交錯する。

