Artwork Details
Medium: アナログ・インクドローイング(自作のアルミペン、平筆、墨)
Subject: イブニングドレスを纏う女性の肩の曲線
Inspiration: Rouquine「Comme les animaux」
Theme: 人との関わり、肩の線が語る物語と切なさ
Artist: Visual Story Artist Kazue Shima
The Story
紙を筆触する細い線と、塊となった墨が共存する瞬間がある。
自作のアルミペンを手に取り、自由に白い紙の上を走らせる時、墨に埋もれる部分と余白を残す部分を、私の手は描き出す瞬間に本能的に判断する。
この日、私の音のパートナーはRouquineの『Comme les animaux』。
その曲調から、その先にいる誰かに焦がれて、心が締め付けられるような切なさを感じていた。
そんなイメージを抱えながら天から落とされた私の線は、いつしかたっぷりと袖を残したスタイルを描き出していた。
柔らかい黒が肩に大きくかかり、「袖の中に世界を作れ」と囁かれているような気分になった。そのままアルミペンから平筆へと持ち替えた瞬間、突然この形が生まれた。
Materiality & Context
自作のアルミペンは、アルミ板を折って作るため、紙に触れる瞬間に独特の硬さと抵抗を生む。もちろん、筆のような滑らかな接触ではない。
しかし、この絵のように、後から平筆の滑らかさを要求してきたこの線は、私に紙との抵抗を求めてきた、ということだ。
この紙に引っかかる圧は、自然とその後の筆による墨の量を決めてくれる土台にもなる。
一方の平筆は墨を含むほどに穂先が重くなり、紙の上で滲みと擦れを生み出す。この二つの異なる物理的感触の往復が、線そのものに呼吸を与える。
キリッとしたアルミの細いラインは私を律し、平筆の柔らかい感触は私を甘やかす。異なるふたつの画材によるこの物理的な緊張と緩和が、画面に絶妙なバランスとリズムをもたらしたと思う。手と物質が直接対話するこのアナログプロセスこそが、線に体温と呼吸を与えているのだ。
イブニングドレスを着た時の、肩から腕へと流れ出る様は、世界で最も美しい女性の曲線だと私は考えている。しかし、この作品ではあえてその線を「隠し通す」スタイルを選択した。
私はいつも、隠されたものほど雄弁に物語を語ると信じている。手元に膨らんだ平筆の深く重い黒の領域が、逆にその細くて切ない肩の線を視覚的に誘導し、強調しているのだ。
女性の肩は、それだけで全ての物語を語ることができる。男性はその物語のゴールを必死に探すが、容易には辿り着けない。なぜなら、人は人と深く関わり合うことで初めて、その間に存在する物語を知る権利を得るからだ。
その関係性の最後に、彼女が背中や肩の線で語る意味を理解する。
そこからが、本当のスタートなのだ。
このスタートラインを表すために、紙に抵抗するアルミペンの筆触と、溢れ出る柔らかな優しい墨の共存が必須だったのだ、と感じる瞬間だ。

