青いジュエリーを身につけて待つ女性のファッションイラスト。Kazue Shimaによる物語性のあるアート作品。

青いジュエリーの記憶:待つ女性のファッションイラスト

Artwork Details

Medium: デジタルドローイング(Photoshop)

Subject: 青いジュエリーを身につけて彼を待つ女性

Theme: 待つ時間の焦燥、関係性の葛藤、時間の経過

Artist: Visual Story Artist Kazue Shima

The Story

何よりもあなたから自由になりたくて。でもその一方であなたを待ちたくて。

あなたがこの青いジュエリーをつけてくれた日のことを今でも覚えている。

あの日は、朝から外が騒がしくて、あなたをこの部屋でずっと待っている時間が落ちつかなくて、玄関のドアを少し開けて、一歩外に出て佇んでみたり。女の子たちがお喋りしながら走っていったと思ったら、やけに楽しそうなカップルが通り過ぎていく。その彼女の長い栗色の髪の毛がちょっと羨ましくて。

少しばかり空を見ていたら、そうだ、東の廊下のランプが切れていたっけ。でも角のお店のご主人は、一昨日からお孫さんに会いに行くと言っていたから、今日はお休みかもしれない。テーブルの花はなんとなく黄色って気分じゃないから、他の色の花を買いに行かなくちゃ。
そんなことを考えながら道の色に視線を落としていたら、なんだかちょっと惨めになってきて、悲しくなってしまった。

やっぱり花屋に行くのはやめよう。こんな気分でちょうどいい花なんて選ぶ自信もない。そろそろ部屋に戻って、温かいお茶でも入れて窓から外を眺めた方がいいかしら。

お茶を飲んでいると、隣の家の娘さんがピアノを弾き始めた。いつもの曲を弾いている。先週は必ずつかえていた三小節目、今日は綺麗に弾けている。ずいぶん練習したんだわ。

母のところに置いてきたヴァイオリンを持ってくればよかった。今弾いてももう綺麗には弾けないだろうな。私もいつもつかえてしまう曲があって、レッスンの度に先生に怒られていたっけ。曲名が思い出せないけれど、綺麗なんだけど、ちょっと切ない感じがするところがちょっとあの曲に似ているかもね。

後1ヶ月もすれば彼女は最後まで弾けるようになるだろう。一つ一つの小節に時間をかけて、その積み重ねがいつかあの曲を完成させてくれるだろう。

私も、こうして一日一日、時間を積み重ねていけば、あなたとの関係はどこかに着地するんだろうか。ピアノの曲のように、戸惑う瞬間や、たじろいでしまうような場面は減って、まるで最初からその曲を完璧に弾けているピアニストのようにふるまえるんだろうか。

そんなふうになったら、あなたに相応しい女性になるんだろうか。でもその女性は、本当に私なんだろうか。

でも、飲んだお茶のカップを片付けて、部屋のあかりを少し落とし、私はこの青いジュエリーを身につけて、この部屋でまたあなたを待っている。

Materiality & Context

この作品はPhotoshopによるデジタルドローイングで制作されています。使用しているブラシは、POPシリーズのために外部から導入したもので、長年PILOTが販売し現在廃盤となったクレヨンの質感を参照しています。
青灰色の背景、ピンクのボディの柔らかな輪郭、黒い衣服のざらついた陰影は、すべてそのブラシによるデジタルの筆跡で構成されています。

青いジュエリーは、この作品において装飾ではなく物語の核として機能しています。「あなたがこの青いジュエリーをつけてくれた日」という記憶が、待つ時間全体の起点になっています。彼女は虚構の中で愛に葛藤しながら、本来の自分とかけ離れた時間を一日ずつ生きています。その揺れ動きを支えているのが、手の中に確かに存在するジュエリーという物質です。

世界のスピードが増すほど、時間の体感は曖昧になっていきます。この作品で問いかけているのは、そうした時代の中で人が何を拠り所にするか、ということです。物質だけが心を満たせないことは、この女性自身も知っています。それでも彼女が今よりどころにできるのは、深い海の底にある想いのような、この青いジュエリーだけです。

私のPOPシリーズは、80年代のランウェイ経験を起点としています。服や装身具が人の記憶や関係性とどう結びついているかを、物語として描くことがこのシリーズの核心です。

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